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ます。そのため、船底に氷片が入ってソーナードームを痛めやすいなど、通常航海での観測船としての性能と両立することが難しいのです。
これに対して、「みらい」の耐氷構造は砕氷船が切り開いた航路を航行するのが前提となっており、海氷に閉じ込められた場合は砕氷船の支援が必要です。0.6mの破砕水に相当する氷海水槽試験を実施したところ、氷片が船底のソーナードームやサイドスラスタや推進器に流入せず、また、必要な操船が行えることを確かめています。
北極の海氷の厚さについてのまとまった情報はなかなかありませんが、厚さ1〜2mの氷盤の所々に風応力で折り重なってできたリッジという山脈状に厚い部分(3〜4m)があり、夏季ならこのリッジを避けながら2m程度の破氷能力でも北極点まで到達できます。結氷域の周辺が必ずしも氷厚が薄いわけではなく、厚い3〜4mの海氷が離散集合している状態が見られるようです。
それに加えて氷河から流入する氷山があります。
このような状況を考えると、氷縁域といえども、終日太陽が沈まない白夜の季節に肉眼で危険な海氷を監視し、避けながら航行することになると思います。

 

冬季べーリング海では終日太陽が昇らない極夜での海洋観測二ーズも考えられます。グリーランド側と違ってべーリング海側に氷山が流出することはないと言われていますが、無人探査機への搭載が考えられているハイビジョン低照度TVカメラなどの追加装備も必要かもしれません。
6. 船長の憂欝
「みらい」が就航すると、売り物である荒天域や氷海域での研究ニーズと船の安全性との間で船長は板挟みになってしまうのではないか?「まさかそんな」と一笑に付していいのか、それとも、漁船の船長と漁労長との関係のように船を危険な状態に追い込んでしまう恐れを心配すべきか?
これについては、今後の運用を通じて、あくまでも安全を第一にして徐々に「みらい」の潜在的能力を明らかにしていきたいと思います。
(西村一)

 

 

 

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